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模試で「宅建業法は得意なはずなのに点が伸びない」という人の失点は、かなりの割合が個数問題に集中します。「正しいものはいくつあるか」「誤っているものの組合せはどれか」という聞き方をされた瞬間に、いつもの解き方が通用しなくなるからです。
この記事では、①なぜ個数問題だけ極端に難しくなるのか、②本番でどう手を動かすか、③そもそも何を覚えていれば個数問題で崩れないのか、を順番に整理します。③では、実際に条文(e-Gov 法令検索の宅地建物取引業法・同施行令)で確認した「◯と✕の境目」を表にしました。
目次
宅建の個数問題とは(通常問題・組合せ問題との違い)
宅建士試験は、一般財団法人 不動産適正取引推進機構が実施する50問・四肢択一式の筆記試験です(登録講習修了者は一部免除で45問)。マークシートで、4つの選択肢から1つを選ぶ形式そのものは全問共通です。
ところが、その「4つの選択肢」の中身の作り方には、大きく分けて次の3タイプがあります。
| タイプ | 聞かれ方 | 必要な判定 |
|---|---|---|
| 通常の四肢択一 | 正しいものはどれか | 1肢でも自信を持って◯(または✕)と言えれば当たる |
| 組合せ問題 | 正しいものの組合せはどれか | 2〜3肢の確実な判定が必要(選択肢の組合せから絞り込める場合もある) |
| 個数問題 | 正しいものはいくつあるか(一つ/二つ/三つ/四つ) | ア〜エの4肢すべての正誤を確定させないと答えが出ない |
表1:宅建の四肢択一に潜む3タイプ。出典=不動産適正取引推進機構「宅建試験の概要」(2026年9月時点)。
図1:答えを出すまでに正誤を確定させなければならない肢の数。バーの長さは4肢を100としたときの比です。個数問題だけが満点判定を要求してきます。
ここが決定的な差です。通常問題なら「イは明らかに正しい」と分かった時点で終わりますが、個数問題は4肢全部を独立に判定しなければならず、1肢でもあいまいなら答えが2つに割れます。つまり消去法が原理的に使えない。「なんとなく覚えている」が全部失点に変換される、いちばん容赦のない形式です。
なお、個数問題が何問出るかは年度によって変わります。過去の本試験問題と正解番号表は機構のサイトで公開されています。直近3年分を自分でめくって「いくつあるか」と書かれた問題を数えてみるのが、いちばん早く実感できる方法です(数えると、宅建業法に偏っていることが体感で分かります)。
出典:不動産適正取引推進機構「宅建試験の概要」/同「宅建試験」ページ(過去の試験問題・正解番号表)。
本番での手順:4肢を「△のまま」にしない5ステップ
- 問題文の最後を先に読む。「いくつあるか」なのか「どれか」なのかで手の動かし方が変わります。冒頭から読み始めて、最後の一行で個数問題だと気づいて読み直す——これが一番もったいない時間の使い方です。
- ア〜エの横に◯✕を必ず書く。頭の中だけで数えると、3肢目を読んだ時点で1肢目の判定が薄れます。試験案内で「書込み不可」と明記されているのは受験票だけで、問題冊子への書き込みを禁じる規定はありません。あわせて、自分が選んだ番号も問題冊子に控えておくと、当日夕方の自己採点がそのまま使えます。
- 「主語・時期・数字」の3点だけを見る。個数問題の肢は、条文をほぼそのまま書いて1か所だけ入れ替えて作られていることが多いです。誰が(業者/宅建士/買主)、いつまでに(遅滞なく/2週間以内/契約成立まで)、いくつ(2週間・1月・3月/10分の1・10分の2・1000万円)。この3点を指で押さえながら読むと、違和感の場所が特定できます。
- △は「◯寄りの△」か「✕寄りの△」まで倒す。個数問題は△を残した瞬間に答えが決まらないので、最後は必ず倒します。倒すときの原則は「条文で見た記憶があるか」。記憶にない話を勝手に厳しくしない(受験生は迷うと「もっと厳しい規制があった気がする」に流れがちです)。
- 2分で決着がつかなければ飛ばす。個数問題は配点が1点で、しかも難易度が高い。ここで5分溶かすと、後半の取れるはずの問題が雑になります。時間配分の考え方は試験当日の持ち物・時間配分・解く順番にまとめています。
図2:個数問題を本番で処理する5ステップ。1〜3で判定材料を集め、4で△を倒し、5で見切ります。
宅建業法「◯と✕の境目」チェックリスト①:主語(誰と誰の取引か)
個数問題で問われるのは、結局この「境目」です。以下は条文(e-Gov 法令検索)で確認した内容を、間違えやすい形に絞って表にしたものです。曖昧なところがあれば、そこがあなたの失点源です。
1. 8種制限は「誰と誰の取引か」から始まる
いわゆる8種制限(クーリング・オフ、手付の額の制限、損害賠償額の予定の制限など)は、宅建業者が自ら売主となる場合の規定です。さらに宅建業法78条2項は、33条の2および37条の2から43条までの規定は宅建業者相互間の取引には適用しないと定めています。つまり買主も業者なら、これらの制限はかかりません。肢の冒頭で「AがBに」とあったら、まずBが業者かどうかを確認する。ここを読み飛ばした時点で、その肢は運任せになります。
宅建業法「◯と✕の境目」チェックリスト②:数字
2. 数字の境目(ここが一番出る)
| 論点 | 境目 | 根拠(出典=e-Gov法令検索・2026年9月時点) |
|---|---|---|
| クーリング・オフの期間 | 撤回できる旨・方法を書面で告げられた日から起算して8日を経過するとできなくなる。また、引渡しを受け、かつ代金の全部を支払ったときもできない | 法37条の2第1項 |
| クーリング・オフの効力 | 書面を発した時に効力が生じる(到達時ではない)。業者は損害賠償・違約金を請求できず、受領した手付金等は速やかに返還。申込者等に不利な特約は無効 | 法37条の2第2〜4項 |
| 損害賠償額の予定等 | 予定額と違約金を合算した額が代金の10分の2を超える定めは不可。超えた場合、契約全体ではなく超える部分だけが無効 | 法38条 |
| 手付の額 | 代金の10分の2を超える額の手付は受領できない | 法39条1項 |
| 手付解除 | 手付の性質を問わず、買主は放棄、業者は倍額を現実に提供して解除できる。ただし相手方が履行に着手した後は不可。買主に不利な特約は無効 | 法39条2・3項 |
| 契約不適合責任の特約 | 民法より買主に不利な特約は原則不可。例外は、通知期間を引渡しの日から2年以上とする特約 | 法40条 |
| 手付金等の保全(未完成物件) | 受領額が代金の5%以下 かつ 1000万円以下なら保全措置は不要 | 法41条1項ただし書+施行令3条の5 |
| 手付金等の保全(完成物件) | 受領額が代金の10分の1以下 かつ 1000万円以下なら不要 | 法41条の2第1項ただし書+施行令3条の5 |
表2:自ら売主となるとき(8種制限)の数字の境目。出典=e-Gov法令検索・2026年9月時点。※表は横にスクロールできます。
| 論点 | 境目 | 根拠(出典=e-Gov法令検索・2026年9月時点) |
|---|---|---|
| 営業保証金の額 | 主たる事務所1000万円、その他の事務所は1か所につき500万円 | 法25条2項+施行令2条の4 |
| 弁済業務保証金分担金 | 主たる事務所60万円、その他の事務所は1か所につき30万円。新設したときはその日から2週間以内に納付、しなければ社員の地位を失う | 法64条の9+施行令7条 |
| 営業保証金と開業 | 供託して届出をした後でなければ事業を開始できない。免許から3か月以内に届出がないと催告、催告到達から1か月以内になお届出がなければ免許を取り消すことができる(「しなければならない」ではない) | 法25条5〜7項 |
表3:営業保証金と弁済業務保証金分担金の数字の境目。出典=e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」および同施行令(2026年9月時点の条文で確認)。※表は横にスクロールできます。
「5%」と「10分の1」、「2週間」と「1か月」と「3か月」、「取り消さなければならない」と「取り消すことができる」。個数問題はまさにこの1文字を入れ替えてきます。逆に言えば、この表を口で言えるようになれば、個数問題は急に「ただの4問」に戻ります。
宅建業法「◯と✕の境目」チェックリスト③:書面と報酬
3. 35条書面と37条書面の境目
| 35条書面(重要事項説明書) | 37条書面 | |
|---|---|---|
| いつ | 契約が成立するまでの間 | 契約成立後、遅滞なく |
| 誰に | 取得者・借主側(宅建業者の相手方等) | 売買・交換は契約の各当事者(自ら当事者なら相手方、代理なら相手方および依頼者) |
| 説明 | 宅建士に説明させる。宅建士は宅建士証を提示 | 説明義務の定めはない |
| 記名 | 宅建士の記名が必要 | 宅建士の記名が必要 |
| 相手方が宅建業者のとき | 説明は不要になり交付のみでよい(書面には宅建士の記名が必要) | 相手方が業者でも交付は必要 |
表4:35条書面と37条書面の違い。記名は両方に必要で、説明義務があるのは35条書面だけです。
根拠:宅地建物取引業法35条(1項・4項・5項・6項・7項)、37条(1項・2項・3項)。出典:e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」/同「宅地建物取引業法施行令」。
「37条書面も宅建士が説明しなければならない」「35条書面は業者間取引では交付も不要」——このあたりが個数問題の定番の✕肢です。記名は両方必要/説明は35条だけと覚えると崩れません。
4. 報酬・掲示のように「地味だが確実に出る」もの
報酬の額は国土交通大臣が定めるところによるとされ、業者はその額を超えて報酬を受けてはならず、さらに事務所ごとに、公衆の見やすい場所に報酬額を掲示しなければなりません(法46条)。「掲示は主たる事務所だけでよい」といった肢は、この条文を知っていれば一瞬で✕にできます。
個数問題に強くなる復習のしかた
個数問題対策は「新しい問題を解く」より「今の知識のあいまいさを可視化する」ほうが効きます。おすすめは次の3つです。
- 一問一答(◯×)で肢単位の判定力を鍛える。個数問題は結局、肢を4本まとめて出しているだけです。◯×形式は個数問題とまったく同じ能力を測っています。
- 正解した問題にも「自信あり/なんとなく」を付ける。「なんとなく◯で当たった」肢は、個数問題では失点予備軍です。まぐれ当たりを潰すのが直前期の仕事になります。
- 間違えた肢は、条文の「境目」で言い直す。「なんか違った」で終わらせず、上の表のように「◯になる条件は何か」まで戻す。ここまでやると、初見の肢にも対応できます。
独学で「境目」が詰めきれないと感じたら
個数問題が苦手な状態は、たいてい「テキストは読んだが、条文の要件まで戻る習慣がない」ことが原因です。独学でここを自力で詰めるのはできますが、時間はかかります。残り時間が少ない人、去年あと数点で落ちた人は、講義で要件の切り分けを一度通しで浴びたほうが早いこともあります。費用と学習スタイルで比較してみてください。
まとめ
- 個数問題は4肢すべてを判定する必要があり、消去法が使えない。あいまいな知識がそのまま失点になる
- 本番では「最後を先に読む→ア〜エに◯✕を書く→主語・時期・数字を見る→△を倒す→2分で見切る」
- 覚えるべきは条文の境目。8種制限は業者間には適用されない(法78条2項)、5%と10分の1、2週間・1か月・3か月、記名は両方/説明は35条だけ
- 対策は一問一答で肢単位の判定を鍛え、「なんとなく当たった」を潰すこと
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