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宅建業法の「引っかけ肢」総まとめ

数字・主語・期限の入れ替え6パターンを、条文で潰す

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宅建業法は50問中20問。宅建試験で最大の配点であり、しかも「条文どおりに覚えれば取れる」科目です。にもかかわらず、模試で16点・17点から上がらない人が大量にいます(※本記事の得点の目安は、宅建GYMが合格ラインから逆算した学習上の目標で、公表値ではありません)。原因はほぼ一つで、出題者が条文の1か所だけを入れ替えて✕肢を作っているのに、こちらが「だいたい合っている」レベルでしか覚えていないからです。

逆に言えば、入れ替えられる場所には型があります。この記事では、宅建業法のひっかけ肢を6つのパターンに分解し、それぞれについて e-Gov法令検索で確認した条文とセットで並べました。読み終えたときに「この表を口で言えるか」が、そのまま業法の得点になります。

なぜ宅建業法は「ひっかけ」で作られるのか

権利関係(民法)は、条文だけでは答えが出ず判例の理解が要るので、問題文が長くなり事例形式になります。一方の宅建業法は、条文が短く、要件と効果がはっきりしています。「三十日以内に」「遅滞なく」「五年」「二週間」——数字と語尾が条文にそのまま書いてある。

出題者からすると、これは正しい条文を書き写して、1語だけ差し替えれば✕肢が完成するということです。だから業法の誤り肢は、まるごとウソではなく「9割正しくて1か所だけ違う」形で出てきます。読んでいて違和感がないのは当然で、違和感を頼りにしている限り点は安定しません。

やるべきことは、入れ替えられうる場所を先に知っておいて、そこだけを指で押さえて読むことです。以下の6パターンがその「場所」です。

ひっかけ肢が作られる6か所 正しい条文の一部だけを、数字・主語・時期・語尾・例外・似た制度の6か所のいずれかで入れ替えて誤り肢が作られる。 正しい条文(9割は正しい) 入れ替えられるのは、この6か所だけ ① 数字 ② 主語 ③ 時期 ④ 語尾 ⑤ 例外 ⑥ 似た制度
図1:ひっかけ肢の作られ方。正しい条文の①〜⑥のどこか1か所だけが差し替えられます。以下の6つの見出しが、そのまま①〜⑥に対応します。

パターン1:数字の入れ替え

最頻出です。とくに「5年/3か月/30日/2週間/10日/7日/5日」は、どれも業法の別の場面で使われているため、そのまま横流しされます。以下は条文で確認した数字の一覧です。※数字はすべてe-Gov法令検索の条文本文で確認しています(2026年9月5日確認)。

条文で確認した数字の一覧

場面正しい数字根拠
免許の有効期間5年法3条2項
宅建士証の有効期間5年法22条の2第3項
宅建士証の交付前に受ける法定講習交付の申請前6月以内に行われるもの(試験合格から1年以内の交付申請なら不要)法22条の2第2項
業者の変更の届出30日以内法9条
廃業等の届出30日以内(死亡の場合は相続人がその事実を知った日から)法11条1項
専任媒介契約の有効期間3月を超えられない。超える定めをしても3月に短縮される(契約全体が無効になるのではない)法34条の2第3項
指定流通機構への登録専任媒介=7日以内、専属専任媒介=5日以内(いずれも休業日を算入しない法34条の2第5項+施行規則15条の10
依頼者への業務処理状況の報告専任媒介=2週間に1回以上、専属専任媒介=1週間に1回以上法34条の2第9項
案内所等の届出業務を開始する日の10日前まで法50条2項+施行規則19条3項
専任の宅建士の設置事務所=業務に従事する者の数の5分の1以上、案内所等=1人以上法31条の3第1項+施行規則15条の5の3(※2026年9月5日確認)
専任宅建士が足りなくなったとき2週間以内に必要な措置を執る法31条の3第3項
免許の欠格期間拘禁刑以上の刑:執行を終わった日等から5年。罰金刑は業法違反・暴力団対策法違反・傷害/暴行/脅迫/背任等の一定の罪に限り5年法5条1項5号・6号
よく入れ替えられる日数 専属専任媒介の登録5日、専任媒介の登録7日、案内所等の届出10日前、専任宅建士の補充2週間、業者の変更の届出30日。 専属専任媒介の登録5日 専任媒介の登録7日 案内所等の届出10日前まで 専任宅建士の補充2週間 業者の変更の届出30日以内
図2:上の表のうち「日数」だけを、長さで比べられるように並べたもの。5日と7日、10日と30日が横流しされます。指定流通機構への登録(5日・7日)は休業日を算入しません。

定番の✕肢:期間だけが3月に短縮される

ここで一番よく作られる✕肢が「専任媒介契約の有効期間を6月と定めた場合、その媒介契約は無効である」の類です。正しくは期間だけが3月に短縮されます。契約自体は生きる。「無効になる」「取り消せる」と書いてあったら、効果の入れ替えを疑ってください。

専任媒介契約の期間は3月に短縮される 6月と定めても、契約自体は有効のまま期間だけが3月に短縮される。 契約で定めた期間6月 法律上の効力3月に短縮 契約は無効にならない。期間だけが縮む
図3:破線=当事者が定めた6月、塗り=法律上効力を持つ3月(法34条の2第3項)。「契約が無効になる」と書いてあれば、効果の入れ替えです。

もう一つ。指定流通機構への登録の「7日/5日」は休業日を算入しないと規則に明記されています。「契約日を含めて7日以内」「休業日も含めて」といった書き足しは✕です。

パターン2:主語(誰が・誰に)の入れ替え

数字の次に多いのがこれです。宅建業法には「国土交通大臣」「都道府県知事」「農業委員会(※こちらは法令上の制限)」など似た主体が並び、しかも業者に対する規律宅建士に対する規律が並走しています。ここが混ざると総崩れになります。

主体を取り違えやすい7場面

誰の話か正しい相手方・主体根拠
免許2以上の都道府県に事務所=国土交通大臣/1の都道府県のみ=都道府県知事。※本店・支店の場所ではなく事務所の所在の広がりで決まる法3条1項
免許換え新たな免許を受けたときに従前の免許が効力を失う(先に廃業届を出すのではない)法7条1項
宅建士の登録試験を受けた(合格した)都道府県の知事の登録。勤務地の知事ではない法18条1項
登録の移転移転先の知事に対し、現に登録している知事を経由して申請法19条の2
案内所等の届出免許権者(大臣または知事)と、所在地を管轄する都道府県知事の両方に届け出る法50条2項
報酬額の掲示事務所ごとに、公衆の見やすい場所に掲示(主たる事務所だけではない)法46条4項
従業者名簿・帳簿いずれも事務所ごとに備える。名簿は請求があれば閲覧させるが、帳簿に閲覧義務の定めはない法48条3・4項、法49条

定番の✕肢:登録先の知事

「宅建士の登録は、勤務先の事務所がある都道府県の知事に対して行う」——これは典型的な✕肢です。登録は合格した試験地の知事。勤務先が他県になったときに使うのが登録の移転で、しかも「しなければならない」ではなく「できる」(次のパターン4につながります)。

パターン3:時期・タイミングの入れ替え

業法の時期表現は、実質「あらかじめ/契約が成立するまでの間/遅滞なく/その日から○日以内」の4種類しかありません。だからこそ入れ替えやすい。

時期の一覧

場面正しい時期根拠
35条書面(重要事項説明)契約が成立するまでの間法35条1項
37条書面契約成立後、遅滞なく法37条1項
広告の開始時期工事完了前は、開発許可・建築確認等の処分があった後でなければ広告できない法33条
取引態様の明示広告をするとき=広告に明示/注文を受けたとき=遅滞なく明らかにする(2回必要)法34条1・2項
変更の登録(宅建士)遅滞なく申請法20条
営業保証金と開業供託して届け出た後でなければ事業を開始できない法25条5項
案内所等の届出あらかじめ(業務開始日の10日前まで)法50条2項+施行規則19条3項

広告の開始時期は「契約はできないが広告はできる」と混同させる肢がよく出ます。正しくは、工事完了前に許可等がまだなら広告そのものができない(法33条)。そのうえで、33条と36条は適用範囲が違います。ここが最頻出の引っかけです。

最頻出:33条(広告)と36条(契約)は範囲が違う

法33条(広告の開始時期の制限)=広告
「宅地又は建物の売買その他の業務に関する広告をしてはならない」
売買  交換  貸借  → 3つとも対象
法36条(契約締結等の時期の制限)=契約の締結・代理・媒介
その売買若しくは交換の契約を締結し、又はその売買若しくは交換の媒介をしてはならない」
売買  交換  貸借 × → 貸借は対象外

33条は「売買その他の業務に関する広告」と広く書かれているので、貸借の広告も対象です。これに対し36条は「売買若しくは交換」としか書いておらず、貸借は入りません。つまり貸借は、工事完了前でも契約は締結できるが、広告はできないという非対称になります。「貸借だから両方セーフ」「貸借だから両方アウト」と揃えて覚えていると、ここで必ず落とします。

33条(広告)と36条(契約)の適用範囲 広告の制限は売買・交換・貸借の3つすべてに及ぶが、契約の制限は売買と交換だけで、貸借は対象外。 売買 交換 貸借 広告(33条) 契約(36条) ◯=制限あり ✕=制限なし(対象外) 貸借は「広告だけ」できない、が正解
図4:工事完了前の制限が及ぶ範囲。貸借は33条(広告)の対象だが36条(契約)の対象外という非対称が、ここでいちばん狙われます。

広告=33条(売買・交換・貸借のすべて)/契約=36条(売買・交換だけ)——条文番号と適用範囲をセットで覚えると混ざりません。

パターン4:「できる」と「しなければならない」の入れ替え

語尾だけの差なので、読み飛ばすと100%やられます。しかも、この差は「義務か任意か」という試験的にいちばん大事な区別です。

語尾の一覧

場面正しい語尾根拠
登録の移転申請することができる(義務ではない)。ただし事務禁止処分の期間中はできない法19条の2
宅建士証の交付申請申請することができる法22条の2第1項
変更の登録申請しなければならない(遅滞なく)法20条
営業保証金の届出がない場合の免許取消し催告到達から1月以内になお届出がなければ、免許を取り消すことができる法25条7項
宅建士証の返納登録が消除された・宅建士証が失効した→速やかに返納しなければならない法22条の2第6項
事務禁止処分を受けたとき速やかに宅建士証を提出しなければならない(返納ではなく「提出」。期間満了後、請求があれば返還される)法22条の2第7・8項
できる(任意)と、しなければならない(義務) 任意は登録の移転・宅建士証の交付申請・営業保証金未届出による免許取消し。義務は変更の登録・宅建士証の返納・事務禁止処分時の提出。 できる(任意・しなくてよい) ・登録の移転(法19条の2) ・宅建士証の交付申請(22条の2) ・営業保証金の未届出による取消し しなければならない(義務) ・変更の登録(法20条・遅滞なく) ・宅建士証の返納(22条の2第6項) ・事務禁止処分のときの提出
図5:上の表の語尾を、任意と義務の2つに振り分けたもの。「登録の移転をしなければならない」は任意を義務にすり替えた✕肢です。

定番の✕肢:登録の移転は義務ではない

「登録の移転をしなければならない」と「免許を取り消さなければならない」。この2つは定番の✕肢です。前者は任意、後者は「できる」(任意的取消し)。逆に、法5条1項の欠格事由に該当したことによる取消しは必要的なので、個々の条文で語尾を確認する以外に近道はありません。

パターン5:例外を消す/ないはずの例外を付け足す

「常に」「必ず」「一切」「いかなる場合も」という強い副詞が出てきたら、まず疑ってください。逆に、「〜の場合を除き」と本当は存在しない例外を差し込んでくる肢もあります。

受験生は迷ったとき「もっと厳しい規制があった気がする」に流れます。出題者はその癖を知っていて、存在しない義務を足した肢を用意します。記憶にない義務は、勝手に作らないでください。

パターン6:似た制度の取り違え

最後は、名前が似ている制度をすり替えるタイプです。ここは「どっちの話か」を一言で言えるかがすべてです。

混同されるペア切り分け
変更の届出/変更の登録届出=業者(30日以内・法9条)、登録=宅建士個人(遅滞なく・法20条)
免許換え/登録の移転免許換え=業者の事務所の配置が変わったとき(法7条)、登録の移転=宅建士が他県の事務所に従事するとき(法19条の2・任意)
営業保証金/弁済業務保証金分担金供託所に自ら供託するのが営業保証金(主たる事務所1000万円・その他500万円)、保証協会に納付するのが分担金(60万円・30万円。事務所新設は2週間以内)※法25条2項・64条の9ほか(2026年9月5日確認)
標識の掲示/案内所等の届出標識は業務を行う場所ごとに必ず掲示(法50条1項)。届出が必要なのは契約締結等を行う案内所等に限られる(法50条2項)
従業者証明書/宅建士証従業者証明書は取引の関係者の請求があれば提示(法48条2項)、宅建士証は重要事項説明のときは請求がなくても提示(法35条4項)
業者の手続と宅建士の手続 業者側は変更の届出30日以内と免許換え。宅建士側は変更の登録を遅滞なくと、任意の登録の移転。 業者(会社)の手続 ・変更の届出=30日以内(法9条) ・免許換え(法7条) ・営業保証金/分担金 宅建士(個人)の手続 ・変更の登録=遅滞なく(法20条) ・登録の移転=任意(19条の2) ・宅建士証の交付・返納・提出
図6:似た名前の制度は「会社の話か、人の話か」でまず分けます。届出と免許換えは業者、登録と移転は宅建士。表の5ペアはすべてこの線で切れます。

根拠条文の出典:e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」同「宅地建物取引業法施行令」同「宅地建物取引業法施行規則」(本記事の数字・語尾はすべて条文本文で確認しています。とくに33条「売買その他の業務に関する広告」・36条「売買若しくは交換」の文言は、2026年8月にe-Gov法令検索の条文本文で再確認しました)

ひっかけに強くなる読み方(本番での手順)

  1. 肢を読む前に、業法の肢だと分かった時点で「6パターンのどれか」を探しに行く。漠然と読むと違和感に頼ることになります。
  2. 数字・主語・語尾に指を置く。「30日」「知事」「しなければならない」の3点を物理的に押さえながら読むと、入れ替え箇所が浮きます。
  3. 強い副詞(常に・必ず・一切)を丸で囲む。囲んだ肢は、例外があるかどうかだけを検討すれば答えが出ることが多いです。
  4. 迷ったら「原則どおり」に倒す。存在しない厳しい義務を作らない。これだけで正答率が数%上がります。

個数問題(「正しいものはいくつあるか」)は、このひっかけ肢を4本まとめて出しているだけです。形式面の対処は個数問題の解き方にまとめているので、あわせて読むと効きます。

◯×の一問一答で、入れ替えに気づく回路を作る。 宅建GYMは無料・登録不要。肢単位で判定する練習は、ひっかけ対策とまったく同じ訓練です。間違えた問題は自動で復習に回ります。 → 宅建GYMで一問一答を解く(無料)

どうしても業法が18点に届かないとき

業法20問は、合格者なら17〜18点を取ってくる科目です。ここが14点前後で止まっているなら、原因は「知識の量」ではなく「条文の要件まで戻る習慣がない」ことにあります。テキストを読み直すより、上の表を音読して言えないところだけ条文に戻るほうが速い。

※ここでの「17〜18点」「14点」も、宅建GYMが合格ラインから逆算した学習上の目安です。科目ごとの合格基準(足切り)は公表されていません。

それでも独学で詰めきれない、去年あと数点で落ちた、という人は、講義で要件の切り分けを一度通しで浴びると早いことがあります。費用と学習スタイルで比べてみてください。

まとめ

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